これにて一件落着?~許す、許さないの境目~その3

ええと、前回は直江兼続の「閻魔様への書状」についてお話させていただきました。

簡単にそのお話を振り返りまする。
兼続の家臣によって、身内を殺された領民達が、
兼続の示した「金銭による解決案」、いわゆる内済を拒み、
殺された身内を「生き返らせる」ことを強く要求したところ、
兼続は、「そんなに身内を生き返らせたいなら自分達で閻魔様と話をつけろ」
と、要求してきた領民を斬り殺してしまったお話で御座います。

このお話は、ワタクシにはいまひとつ腑に落ちない、
ええ、釈然としない「お裁き」なので御座います。
では何ゆえ、釈然としないので御座いましょうか。

思いまするに、領民達も
死んだ者が生き返る事などありえないと分かっていたことでございましょう。
ええ、誰が見てもこれは叶うはずなどない要求なので御座います。
では何故、遺族たる領民は出来るはずもない要求を申し立てたので御座いましょうか。

ここで身内を殺された遺族の立場を考えねばなりませぬ。
身内を失った者にとって、兼続の示したお金での解決案には、
素直に首肯できなかったと考えて、なんら不思議は御座いません。
なぜ首肯できなかったかと申せば、
その解決案ではこの事件の犯人である兼続の家臣を
「許す」ことを前提にしているからで御座います。
しかしながら、領民の遺族にとって、
兼続の家臣である咎人を厳罰に処することこそ、
彼らの本当の要求だったのではないかと思えるので御座います。
ええ、簡単に許すことなど考えられなかったのでは御座いますまいか。

しかしながら、当時の支配者である武士の下した「判決」
被支配者である農民が正面から不服を申し立てるのは難しいことでございましょう。
ですから、武士が下した「お金でなかったことにしろ」と言う理不尽な「判決」に、
農民達は「生き返らせろ」と言う出来はしない要求を突きつけることによって
精一杯の抵抗を試みたように感じられてならないので御座います。
その領民の思いを知ってか知らずか、兼続は思い切った、
よく言えば、非常に大胆な落とし前をつけてこの事件を終結させるので御座います。

このお話でまず釈然としないのは、

「オレ様の下した判決に文句を言うやつは許さない」
という

権力者側のまことに強気の対応が、
何の力もない小市民であるワタクシには
非常に恐ろしく思えてならないということで御座います。

もう一つ、釈然としないことが御座います。
それは、裁く立場である「兼続」の考えと、
被害者の遺族である領民の考えとでは、
まるで違うと言うことで御座います。
なにが違うかと申しますれば、
先ほど少しだけ申し上げましたように、

咎人を「許す」「許さない」かという点で御座います

裁く側である兼続は咎人を「許す」ことを前提に、
遺族の領民側は咎人を「許さない」ことを前提にしておりまする。

ええ、ここでやっと、お題に係わるお話をすることが出来そうで御座います。
ですが、お話が長くなりましたようで、
夜もスッカリ更けてしまいました。

なお、蛇足ながら少々付け加えさせていただきます。
領民達が、兼続に対して理不尽な要求をしたのは、
慰謝料の金額を吊り上げるためだったとの解釈もあり、
故に兼続はその卑しい要求を拒むため、
遺族である領民を斬り殺すという苛烈な行為に及んだ、とも聞いております。
実話かどうかも定かでないお話ゆえ、検証することは叶いませんが、
このエピソードを最初に聞いた時のワタクシの個人的な考えを
お話させていただいております。

では、この続きはまたの機会ということにさせていただきたく思います。

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  • これにて一件落着?~許す、許さないの境目~その4

    Excerpt: ええと、前回はどこまでお話いたしましたかな? なにせ、思いがけず長いお話になってしまいまして、 ワタクシも少しばかり脳細胞を叩き起こさなければなりませぬ。 はいはい、そうでございました、 直江.. Weblog: 御伽衆 racked: 2008-10-21 21:46