これにて一件落着?~許す、許さないの境目~その2

ハイ、先日は直江兼続直江状についてお話させていただきました。

そして、実は直江兼続にはもうひとつ、
書状にまつわる有名なエピソードが御座います。

それは、「閻魔様への書状」と言われるもので御座います。

閻魔様とはご存知の通り、死者を裁く冥界の王様として有名な、
あの閻魔大王で御座います。
その閻魔様にどの様な書状を発したので御座いましょうか。
なお、この書状も現存しておらず、実話か否かは疑問だそうでございまするが、
おそらく直江兼続の「人となり」を示すものとして、お話だけ伝えられておりまする。

あるとき、兼続の家臣が領民を斬り殺してしまったので御座います。
そこで兼続は、被害者である領民の遺族の言い分と
加害者である自分の家臣の言い分とに耳を傾けたので御座います。
その結果、「自分の家臣の方が悪い」との結論に達したので御座います。
そこで領民の遺族にお詫びのお金、
まあ今で言うなら、慰謝料で御座いましょうが、
これを支払うことで一件落着としようとしたので御座います。
ところがこれに対して領民の遺族はどうしても納得しようとしないので御座います。

「金なんざぁ、いらねぇ。それよりあの人を生き還らせてくれ」


と主張して譲らないので御座います。
気持ちは理解できまするが、死んでしまった人間を生き返らせる方法など、
この世にあろうハズも御座いませぬ。

しかし、遺族達のこの訴えを聞いた兼続

「わかった」と一言答えると、

領民の遺族達を、これまた斬り殺してしまったので御座います。
その上で、その遺体に次の様な書状を持たせたので御座います。

「はじめまして、閻魔さん。

実はチョイと訳あって、

死んだ人間を生き返らせなきゃならないんだが、

どう考えてもオレには無理だわ。

だから閻魔さんの力で、人間をひとり、生き返らせてやってもらえないかな。

あ、そうそう、コイツラ、死んだヤツの遺族なんだけど、

今そっちに送るから、

詳しい話はそいつらから聞いてくれ。

どうかよろしく」


なんともすさまじい話で御座います。
もちろん今の世に通じるはずもない「お裁き」で御座います。

もし、水戸のご老公が、助さん格さんを従え三つ葉葵の印籠を振りかざしながら、
あるいは遠山の金さんが、もろ肌脱ぎとなって肩の桜吹雪の刺青を見せながら
このような「お裁き」を申し渡し、

「これにて、一件落着」などと言ったとしますれば、

テレビのあるお茶の間において、

子供達は「誰が善人で、誰が悪人かわからない」と混乱し、

お父さんお母さんはその理不尽さに眉をひそめ、

オジイサンオバアサン達は「ご老公様がそんなこと言うはずは…」と呟きながら卒倒し、

ついにはテレビ局に抗議の電話が殺到すること間違いなしで御座います。

さて、何ゆえ、この「お裁き」が釈然としないのかについては、
ワタクシが愚考いたしましたところを、次回お話させていただきたく存じます。
ええ、いつもの下らないワタクシの話とは少々違いまして、
なかなかにシリアスな内容に思われるやもしれませんが、
なに、ワタクシごとき忘八者が考えつく程度のことゆえ、
さほど難しいお話になるハズも御座いません。
ですから次回もどうぞお気楽にお付き合いくださいます様お願いいたします。
それでは今宵はスズムシの鳴き声を聴きながら、秋の夜をお楽しみくださいませ。

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  • これにて一件落着?~許す、許さないの境目~その4

    Excerpt: ええと、前回はどこまでお話いたしましたかな? なにせ、思いがけず長いお話になってしまいまして、 ワタクシも少しばかり脳細胞を叩き起こさなければなりませぬ。 はいはい、そうでございました、 直江.. Weblog: 御伽衆 racked: 2008-10-21 21:46